運転代行業者の随伴車が起こす事故を巡って、被害者との間でトラブルが頻発している。
随伴車には任意保険への加入義務がなく、料金値下げ競争などで随伴車に保険をかけない業者が多いことから、十分な賠償が出来ないためだ。飲酒運転の取り締まり強化で需要の高まる代行業者。師走に入り、飲酒機会も増える中、警察庁と国土交通省は、運転代行業者の利用客を対象にアンケートを行うなど、随伴車の実態の調査を進めている。
「賠償もできないのに営業しているとは……」。昨年10月、随伴車にはねられて死亡した群馬県の高校3年生(当時18歳)の父親(50)は憤りが収まらない。
塾から自転車で帰宅途中、時速約100キロで走ってきた随伴車に交差点ではねられた。随伴車は任意保険に加入しておらず、業者が賠償に応じようとしないため、父親らは今年5月、約6000万円の損害賠償を求める訴訟を前橋地裁に起こした。
運転代行の開業には、運転代行業法に基づき、各都道府県公安委員会の認定が必要。ただ、タクシーなどが運転できる自動車2種免許があれば、警察署への申請で比較的容易に認定される。警察庁によると、業者の数は同法が施行された2002年の4148から昨年には8705に倍増。随伴車の事故も、114件から約2・5倍の293件に急増している。
運転代行業者には、利用客の車を運転中に人身事故を起こした場合、最大8000万円以上の保険金が出る「代行保険」への加入が義務づけられているが、随伴車には任意保険の加入義務がない。国交省は「随伴車は、利用客を乗せていない業務用車両に過ぎず、保険の加入義務づけは厳しすぎるから」と説明する。
2011.12.02